ようこそ、夢かふぇへ。
【第四話】
前回、こう書きました。
「財布を開ける前に、5秒だけ止まってほしい」と。
では、その5秒で何を見ればいいのか。
今日はその答えです。
ねぇ、無料の先に、 何が置いてあると思う?私は昔、 そのことを考えたことがありませんでした。
いい話を聞いたら感動する。
すごい人の話なら信じる。
みんなが集まっていたら安心する。
でも、ある夜。
一本の動画を見た時に、 私は初めて気づいたのです。
「あ、この先に置いてあるものが見えた」
今日は、 そんな話を書きます。
初めての方は、第一話から読んでいただくと、もっと伝わると思います。でも、ここからでも大丈夫です。
1|動画が、消えていった
コロナ禍のことです。
YouTubeで動画がどんどん消えていきました。
特定のテーマを扱った動画が、ある日突然なくなる。昨日まであったのに、今日には跡形もない。再生しようとしたら「この動画は削除されました」という画面だけが残っている。
ならニコニコ動画にはあるかもしれない。そう思って探しに行きました。YouTubeで消えた動画が、まだそこに残っているかもしれない。そんな期待がありました。
私はある人の動画を探していました。その人の話が聞きたくて検索をかけていたとき、全く知らない人の動画に辿り着きました。
サムネイルに見覚えはなかった。でも何となく、再生ボタンを押しました。日本の歴史や経済の話を、熱量を持って語っていました。
会場には人がたくさん集まっていました。前の方に座った人たちが熱心にメモを取っている。質疑応答では「本当にそうなんですか」「えっ、知りませんでした」という声が飛び交っていました。
「こんな人がいるんや」と思いながら、見続けました。内容は面白かった。でも私はずっと、心のどこかで「ほんまかいな」と思いながら見ていました。
これが大事なことでした。後から気づくのですが。
2|途中で、気づいた
動画が中盤に差し掛かった頃でした。
話の流れの中に、自然な形でサプリメントの話が出てきました。「このサプリを飲んでから体の調子が変わった」「皆さんにもぜひ試してほしい」という流れでした。
その瞬間、私の中で何かがストンと落ちました。
「あ、この講演会の目的はこれやったんや」
怒りではありませんでした。騙されたという感覚でもありませんでした。ただ、構造が見えた。それだけでした。
歴史や経済の話は本物だったかもしれない。語っていた内容に嘘はなかったかもしれない。でもその話は、最終的にここへ繋がるために組み立てられていた。
会場に来ていた人たちのことを考えました。
きっとこの人たちは、もうそのサプリを買っている人たちやろな、と思いました。おそらく年間契約。高額なはずです。内容に共感して、この人を信頼して、だから買った。その流れは自然で、強制でも何でもない。
でもその自然さの中に、設計がありました。
よくできてるな、と思いました。
そして数ヶ月後、もう一度その動画を見に行ったとき、核心の部分がごっそり削除されていました。
なぜ削られたのか、今も分かりません。誰かの指示なのか、本人が判断したのか、それとも別の理由があったのか。
でも私の中に、その日から一つの習慣が生まれました。
この無料の先に、何が置いてあるんやろ
3|人は内容だけで判断しているわけではない
実は最近も、似たようなことがありました。
AI講座です。
ある実業家が紹介していたオンライン講座でした。価格は一万円以下。初心者にとっては「これが本講座や」と思える金額でした。
でも私は、その講師を知っていました。過去のセミナーも見たことがありました。だから何となく分かっていました。たぶん初心者向けやろな、と。
それでも購入しました。
AIというテーマに興味があったこと。そして紹介していた実業家を信頼していたこと。その両方があったからです。
ここで正直に言います。
私はその時、構造が見えていました。「これはフロントエンドやな」と分かっていました。その先に何が置いてあるかも、なんとなく想像できていました。
それでも買いました。
なぜか。
信頼していた人が勧めていたからです。内容ではなく、人を見て判断していました。構造が分かっていても、人への信頼が判断を上書きする。それが人間なのだと、後から気づきました。
そして数ヶ月経った今も、一度も見ていません。講座が悪かったわけではありません。買う前に感じていた感覚が、やっぱり正しかっただけでした。
構造が見えていても、感情が動いたら人は動く。だから「知っているだけ」では足りない。知った上で、5秒立ち止まる。それが必要なのだと、この経験が教えてくれました。
ここで一つ、知っておいてほしいことがあります。
「フロントエンド・ミドルエンド・バックエンド」という言葉を聞いたことがある方も多いと思います。
フロントエンドは入口商品。無料か低価格で、まず手に取ってもらうためのもの。無料セミナー、無料記事、数千円の講座がこれにあたります。
ミドルエンドはその中間。フロントで信頼を得た後に提案される、中価格帯の商品やサービス。数万円の講座や、月額のコミュニティがここに入ります。
バックエンドが本命です。高額な講座、年間契約、継続サービス。数十万円から、場合によってはそれ以上になることもあります。
ニコニコ動画で見たあの講演会も同じ設計でした。歴史や経済の話は本物だったかもしれない。でもその先には、おそらく年間契約のサプリが待っていました。
会場に来ていた人たちの多くは、すでにそのサプリを購入している常連さんやったと思います。
これは裏の目的でも、詐欺でもありません。
これがビジネスの設計です。マーケティングの仕組みとして、普通に存在しています。
知っているか、知らないか。それだけの差です。
ここで一つ、心理学の話をさせてください。
心理学者のロバート・チャルディーニ(1984)は、人が影響を受ける要因の一つとして「権威性」を挙げています。
人は専門家や実績のある人の言葉を信じやすい。肩書き。実績。周囲からの評価。そうしたものは、私たちの判断に大きな影響を与えます。
私がAI講座を買った理由も、そこにありました。内容を見ていたつもりでした。でも実際には、その情報を勧めていた人への信頼も含めて判断していたのです。
ニコニコ動画で見た講演会も同じでした。会場にはたくさんの人が集まっていた。前の方では熱心にメモを取る人たちがいる。質疑応答では共感の声が飛び交う。その空気の中にいると、人は自然と安心します。
これは心理学者のソロモン・アッシュ(1951)が示した「同調」の力です。周囲が信じているものを、人は信じやすい。集団の中にいると、自分の感覚より場の空気を優先してしまう。
だから騙されるのではありません。誰にでも起こることです。人間の脳が、そうできているのです。
私が途中で気づけたのは、特別な知識があったからではありません。ただ心のどこかで、「ほんまかいな」と思い続けていたからでした。
その小さな感覚が、構造を見せてくれました。
4|今も、同じ構造は続いている
コロナ禍から、情報の流通は大きく変わりました。動画配信プラットフォームは増え、SNSは多様化し、音声配信が生まれ、そしてAIが登場しました。でも構造は、何も変わっていません。
例えば、こんな形で。
無料の動画→有料サプリ年間契約。
無料のセミナー→高額講座。
無料のノウハウ→コンサル契約。
無料のメルマガ→バックエンド商品。
無料のSNS発信→高額プログラム。
無料のAIツール→月額サブスク。
無料の記事→書籍購入→メール登録→コーチング。
これはほんの一部です。
プラットフォームが変わるたびに、同じ設計が新しい服を着て現れます。包装紙が変わっただけです。中身の構造は、ずっと同じです。
著名な発信者の無料記事を読んでいると、最後に必ず何かが置いてあります。本の購入リンク、メール登録のお願い、講座への誘導。それ自体は悪いことではありません。
無料は窓、有料は部屋。
窓から中が見えない部屋には、誰も入らない。だから無料で価値を渡す。本物の価値を。そして出口を置く。
これは正直なビジネスの設計です。
私もここで無料で書いています。いつか有料記事を置くつもりです。無料記事はこれからもずっと全部読めます。それが私の設計です。
問題は設計があることではありません。設計があることを知らずに入ることです。
知って入るのと、知らずに入るのは、全然違う。知っていれば、自分で選べます。知らなければ、気づかないまま流れていきます。
構造を知っている人と、知らない人では、同じ情報を受け取っても全く違う場所に辿り着きます。
5|構造が見えたら、自由になれる
難しいことやないんです。
何かに誘われた時、何かを勧められた時、誰かの話に引き込まれた時。
この先に、何が置いてあるんやろ
それだけ、先に見る。たった5秒でいい。
出口が見えたら、入るかどうか自分で決められます。出口が見えないまま入ると、中で気づきます。
出口が見えてから入った場所では、私は本物をたくさんもらいました。出口が見えずに入った場所では、時間とお金を置いてきました。
起業したばかりの頃、信頼していた成功者にこう言われたことがあります。
「一番早い成功への近道は、本を出すことだ」
その瞬間、ドキッとしました。
でも私は、5秒だけ立ち止まりました。
その言葉の先に、何が置いてあるのか。それを見てから、自分で決めました。
どちらも、今の私を作っています。
だから後悔しなくていい。
構造が見えた瞬間、怖くなくなります。怒りじゃなくて、自由になれます。
あ、そういう仕組みやったんか
その一言が言えた時、あなたはもう選ぶ側にいます。誰かの設計の中に入ることを選ぶのも、自分です。入らないことを選ぶのも、自分です。
それが分かった人は、もうどこへ行っても大丈夫です。
次回は、その「出口」を自分で設計する話を書きます。誰かの出口に入るのではなく、自分が出口を持つ側になる話です。
また、ここ夢かふぇでお会いしましょう💐
📚参考文献
Robert Cialdini (ロバート・チャルディーニ|1984) 権威性の原理(Authority Principle) 人は専門家や実績のある人物の言葉を信じやすく、肩書きや評価が判断に影響を与える。
Solomon Asch (ソロモン・アッシュ|1951) 同調実験(Conformity Experiment) 人は集団の意見に影響を受けやすく、周囲が信じているものを信じやすい。
Stanley Milgram (スタンレー・ミルグラム|1963) 服従実験(Obedience to Authority) 人は権威ある人物の指示に従いやすく、自分の判断より相手の判断を優先することがある。
📖前回の第三話はこちらです。
ここまで、お読みいただき、 ありがとうございました。 また、ここ夢かふぇでお会いしましょう☕️💐
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ここは、Substack「夢かふぇ」。
店主の白石孝子です。
歴史、経済、世界の流れ。一般メディアではまだ大きく語られていないことを、カウンターで語りかけるように綴っていきます。
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白石孝子|たーちゃん
Takako Shiraishi
#12









孝子さん。はじめまして。
若い人にこそ、読んでほしいなぁと思って拝見しました。
昔とは違って、あらゆる情報に一気に晒される時代、世の中の仕組みを知って荒波を乗り越えてほしいです。
白石さん、こんにちは。
こういった構造を知っているかで、SNSでの身の置き方が変わりますよね。
意識する事でホンマの勉強になるのか、痛い目にあっての勉強になるのかの分かれ目になるのですね🥰🦌